印材の原石は、普通の鉱山のように脈や層になっているものと、岩塊の中に含まれているものがあります。
ただ採掘するのではなく、坑の中から見当をつけて探すように掘り進めます。
そして、その堀り出した岩塊を割ってみないと中が篆刻の印材として適しているか、価値のある印材になる石か分からないのです。
篆刻石の採掘は、多分に投機的なところもあるわけです。
昔の印材採掘は、道具1本で岩塊の採掘に数年を要し、もう少しで取り出せるというところで岩盤が崩れ落ちて、失望のために気が狂ってしまうという悲惨な話しも残っています。
現在では、火薬を使って爆破して採掘するようになって、職人さんの苦労も減ったようですが、篆刻印材になる石が枯渇してしまい、益々深く掘り進める必要がありますから、もしかしたら今の方が大変な作業かもしれません。
このようにして苦労して取り出した岩塊は、さらに印材として適した部分を削り出し、加工地へ運びます。
加工地では、篆刻石として適当でない部分は除去し、残ったものを磨き浄め、面白い斑紋などがある石は、それを活かして形作ります。
加工によっては、どれだけ素晴らしい篆刻印材であっても、台無しになる可能性がありますから、職人さんにとっては、緊張を強いられる作業となります。